サヤ取り(鞘取り)の仕組み
サヤ取り(鞘取り)の具体例
サヤ取り投資は、「買い」と「売り」を同時に保有する両建て売買の投資です。
2銘柄の株式を両建てする事によって、実際にどのようになるのか、その仕組みを分かりやすい例として日本を代表する銀行の「三菱UFJ」と「三井住友」を例に解説します。
日本に上場する同じ銀行業の株式ですので、下記の株価比較チャートを見ても分かるように普段から株価は、非常に似た値動きで推移しています。
「三菱UFJ」と「三井住友」の株価騰落率比較チャート
株式市場全体が上昇している日には、2銘柄とも株価は上昇し、株式市場が下落している日には、2銘柄とも株価は下落しています。
2社の株価はどちらも1年間で約40%以上下落している事が分かります。
1年前に100万円分の株式を買い保有していた場合は、40万円損しているイメージです。
もし仮にレバレッジをかけて投資した場合は、運用資金は全て無くなっていてもおかしくないほどの大きな下落といえるでしょう。
投資において1度でもこのような事になれば、追加の資金を投入しない限り再度、投資で復活する事は、基本的にほぼ不可能です。
サヤ取り(鞘取り)に相場の下落は関係ない
しかし「三菱UFJ」と「三井住友」のどちらかの株式を買い、もう一方の株式を空売りしていた場合は、上記のような長期の下落でも、全く心配ありません。
■買い銘柄:三菱UFJ
■空売り銘柄:三井住友
買い保有している三菱UFJは約40%の損失ですが、同時に空売りしている三井住友は約40%の利益になり2社の損益の合計は相殺されるからです。
■買い銘柄:三菱UFJは、-40%の損失
■空売り銘柄:三井住友は、+40%の利益
このように仮に金融市場の混乱で株価が暴落しても2社の株価は、ほぼ同じパーセンテージで下落するので、どちらか一方が損失になっても、もう一方は大きな利益になります。
この2銘柄を両建てしている際に、万が一リーマンショックのような金融危機や大きな震災やテロのような突発的に株式市場が暴落したとしても、両社の株価は、ほぼ同じパーセンテージで下落する事が予測できます。
暴落の反対に相場が大きく上昇した場合は、上記の損益が逆転します。
サヤ取り(鞘取り)投資の損益の考え方
サヤ取り投資の損益の考え方は、2銘柄の損益を足し引き合計して考えます。

元々値動きの似ている銘柄を両建てしているので、基本的にどちらか一方の銘柄が利益になっている場合は、もう片方の銘柄は、損失になっている事がほとんどです。
この仕組みがあるからこそサヤ取り投資では、株式相場の上下変動に関係のない運用が可能となります。
しかし2銘柄の値動きが似ているとは言っても、三菱UFJと三井住友は、いずれも違う企業です。
大きな相場全体の上下は、ほぼ連動しますが個別の株価の値動きに多少の差が発生します。
例えば、株価下落時に三井住友の株価が三菱UFJに比べて少しでも大きく下落場合は、三井住友の空売りの利益が三菱UFJの買いの損失を上回る事があります。
サヤ取り投資では、こうした2銘柄のサヤ(値動きは似ているのに、一時的に発生している価格差)を狙って利益を狙う仕組みです。
2銘柄の「買い」と「売り」の両建てを行なって、日々の相場の変動は抑えつつ、2銘柄のサヤの伸縮から2銘柄の合計損益が利益になった状態で、2銘柄の同時決済を目標に運用を行なう。
これがサヤ取り投資の仕組みです。